第70回日本透析医学会学術集会に3症例発表しました
演題Ⅰ
デスカンファレンスによる透析スタッフの終末期ケアに対する意識変容~ワードクラウドを用いた質的評価~
演者:加賀谷 祐二
【目的】
終末期を迎える透析患者のケアは、倫理的課題やスタッフの心理的負担を伴う。デスカンファレンスが、透析スタッフの終末期ケアにどのような意識変化をもたらすか、ワードクラウドを用いた質的評価を行った。
【方法】
広範囲透析アミロイド関節症を伴う長期透析患者及び、喉頭癌の治療を拒否した患者の2症例について検討を行った。デスカンファレンス実施前及び後に透析スタッフにアンケートを実施し、収集した回答をワードクラウドで分析し意識の変化を可視化した。
【結果】
事前のワードクラウドでは透析治療における困難性、患者の性格特性にキーワードが分散していたが、カンファレンス後には患者・家族とのコミュニケーションと患者理解の重要性、疼痛対応の困難さに集約し課題が浮き彫りになった。
【結語】
ワードクラウドを用いた分析により、デスカンファレンスが透析スタッフの終末期ケアに対する意識に変化をもたらしたことが示唆され、今後の課題も明確になった。
演題Ⅱ
チルゼパチドと血糖管理、透析間体重増加との関連
演者:小川 知美
【背景】
糖尿病腎症は慢性透析患者の原疾患の39.5%を占めている。透析医療でも血糖コントロールは課題となっているが、透析患者に禁忌となっている糖尿治療薬は少なくない。そこで2型糖尿病に保険適用となったチルゼパチド(持続性GIP/GLP-1受容体作動薬)の使用を開始した患者に対して、血糖管理や、透析間の体重増加との関連等を検討した。
【方法】
糖尿病と診断し、当院で維持透析療法を行っている患者を対象に、前後3カ月間での透析間のグリコアルブミン(GA)値、体重増加率、ドライウエイト(DW)及び栄養状態の変化について検討した。
【結果】対象者は36名(42%)であり、9名でチルゼパチドの使用を開始した。3カ月でGA値は22.3%から17.6%に改善し(P=0.003)、透析間の体重増加率は4.3%から3.4%に改善した(P=0.05)。 DW、血清アルブミン値、体脂肪率、細胞内液率に有意差は認めなかった。
【結語】
血液透析患者に対するチルゼパチドの使用は血糖値の改善と透析間の体重増加の抑制に期待される。
演題Ⅲ
吻合部拡張直後に出現する血栓がシャント開存に及ぼす影響
演者:星名 浩希
【背景・目的】
血管拡張術(VAIVT)後の内膜損傷は血栓形成や内膜肥厚を招き、再狭窄の一因となると考えられているが、実際に報告された症例は少ない。今回、VAIVT直後の超音波検査により一部の症例で吻合部に血栓形成を認めた。この血栓がシャント開存期間に及ぼす影響を検討した。
【方法】
2024年2月から12月までにVAIVTを施行し、吻合部拡張を行った20例を対象とした。VAIVT施行直後と1時間後の血管内を超音波検査にて観察し、血栓の程度に基づき吻合部血栓群(5例)と血栓小/無群(15例)に分類、各群のシャント開存期間(VAIVT施行日からシャント閉塞または再VAIVTまでの期間)を比較検討した。
【結果】
カプランマイヤー曲線による生存時間分析では、両群間に有意差は認められなかった。しかし、開存期間90日間で区切った場合、カイ二乗検定で有意差を認めた(P=0.0098)。
【考察】
吻合部拡張直後に出現する血栓は、シャント開存期間に負の影響を与える可能性が示唆された。